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"僕の足に絡んだ蔦は あの日蒔いた種だった" 吉井和哉『Island』より

それは「孤独」じゃない

孤独。
現代病である。
だけどそれは本当に「孤独」なのか?

ここからはあくまでもフィクションだ。

あなたの一日

SNSを眺める。
幸せそうな人たち。
その中に、時々、幸せそうな友人たち。

YouTubeを眺める。
楽しそうな実況者。大量の閲覧数。

あなたは、孤独を感じる。
だけどあなたにもSNSでそれなりのフォロワーがいる。
あまり政治的な意見はないが、たまに「なんじゃそりゃ」と思ったときに自分の意見を呟く。
「いいね」を貰える。
ほら、あなたはもう寂しくない。

ゲームでもやろうか。
それなりに楽しい。
このゲームはあまり知られていないけれど、カルト的な人気を持ったゲームだ。
自分よりも深くそのゲームを知っている人が、そのゲームについて驚くほど鮮やかな解釈をブログにまとめてくれている。
ほら、あなたはもう寂しくない。

暇だな。
誰かと飲みに行こうか。
後輩を誘う。
後輩はあなたと同性で、あなたはヘテロセクシュアルであり、かつ後輩には恋人がいるので、恋愛に発展する可能性はまずない。

後輩はどうもあなたのことをそれなりに尊敬してくれているらしい。
その上あなたと飲むのをかなり楽しんでくれているらしく、定期的にその後輩からむしろ誘ってくれるのだが、あなたは都合が合わずずっと断っていた。
誘ってみるか。
快諾してくれた後輩と楽しく飲んで、休日が終わった。
ほら、あなたはもう寂しくない。

……いや、そんなことはない。
やはり寂しい。
なんだこれ?

……
さて。この「フィクション」をあなたはどう思っただろうか。
異世界の物語だと思っただろうか。
それとも自分のことのように読んだだろうか。

前者であれば良い。
後者ならば、……あなたは、僕の同類なんだと思う。

バイクのこと

僕はバイクが好きなのだが、バイクで一人で走っているとき、時折酷い不安に襲われる。
それは旅に伴う不安ではない。
「このままで良いのか?」という不安だ。
「このままで良い」という矮小な自己満足を否定する不安だ。
言い換えると「このままで良くない」ということだ。

なぜ「このままで良くない」のか?
まだまだ自分にはスキル(お金を稼ぐ能力、その他諸々)が足りないからなのか?
おそらく違う。
この「このままで良くない」には、あまり理由がない。
ただただ、「矮小な自己満足を否定する」なんらかの作用が暴走を起こしているだけなのだ。

さて、ここで僕はあえて「矮小な自己満足」という表現を使った。
だがそもそも、自己満足に「矮小な」も「偉大な」もあるのだろうか?

スマホでゴシップを眺める。これは矮小。
哲学書を読む。これは偉大。
そんなバカな話はない。

自己満足は自己満足に過ぎない。それ以上でも以下でもない。
だが、自分の自己満足は、どうも矮小に思えてしまう。

自分を俯瞰で考えてみると、バイクなんてなかなかどーして、かなりいい趣味だと思う。
それでもこの「自己満足を否定する作用」の対象になる。

「自己満足を否定する作用」に耳を傾ける。
……トップYouTuberはもっと尊敬を集めている。
……あなたと同年代の彼は年収1000万円を超えたらしい。
……彼はもう結婚していて、家庭を築いている。
……創造力を駆使して芸術を生み出す人々がいる、それに比べてお前は。

色々な声が聞こえる。

彼は最後に問う。
「自己満足している場合か?」と。

そこでドラッグやら、風俗やら、ギャンブル、過剰な飲酒に走ってしまう人もたくさんいるだろう。
だがあなたはそれをしない程度の理性はあった。
だから自己満足を「肯定」することにした。
それでもなお、「彼」は君に問いかけてくる……

「自己満足している場合か?」と。

彼の名を「孤独」と呼ぶこともできる。
だが、僕は気付いている。
お前は多分……否、間違いなく「孤独」ではない。

僕のこと

そんなことばかり考えて生きている。
昔からこんなことばかり考えて生きていたが、色々あってここ5年で悪化したように思う。
結果、僕は合法的な範囲内で「分かりやすいもの」を求めるようになった。
酒。
良いバイク。
年収。
スキル。
地位。
結婚。
セックス。

これらは「矮小な自己満足」と違い、明確な効果がある。
一瞬「彼」の声を「消せる」のだ。
でも、それはおそらく「彼」の思う壺。

ここで挙げた中で実際にいくつか得られたものもある。
だけどついに「彼」の声は消えてくれなかった。
「彼」はすぐに声を上げてくる。

僕とあなた、僕の同類であるあなたは、「彼」に抗わなければならない。
「彼」を無視し。
僕を面白がってくれる人のために生きながら。
「矮小な自己満足」を全力で肯定しなければならない。
それは自分自身の中に眠る光だ。

「面白くあれ」と唆してくる「彼」は。
僕らをどんどん、つまらなくしている。
抗わなければならない。
それは辛い戦いだけれど。

……何年かかるかなぁ……しんどいなぁ……