Minakami Room

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キングコング西野の件は「炎上」では足りない

ども、Mistirです。

話題になっていますね。
キングコング西野さん(以下敬称略)。

「金の奴隷解放宣言」って。

……あまりこの記事に時間をかけるつもりはないので、知ってる人向けに語ります。
これまでの経緯を知らない方は調べてみてね。

で。
僕は、言いたい。
コレは「炎上」で終わらせてはいけないことだって。

 

  

西野は結局、何をした?

案外、「西野の何が悪いのか」っていうことって語られていない中、漫画家のよしむらかな氏がクリティカルに語られてます。

 引用させていただいてるわけなので、宣伝ツイートも貼っときます

 
さて。
よしむら氏が指摘しているのは、どういうことなのか。

それを語る前に、「大前提」を語らねばならない。

「『作品を無料にしたこと』で、西野は批判されるべきではない」

これは絶対に覚えておかねばならないことです。
「無料にすること」はビジネス上、批判されるべきことではない。
ただし、「正当な手順を踏んだ上で」という前提付きで。

「炎上では足りない」というタイトルにしたのだけれど、結論まで便宜上「炎上」という言葉を使うとすると……

この「正当な手順」がすっ飛ばされたことに対する炎上が、炎上の「一層目」だと僕は考えていて、例えばクラウドファンディングで出資を募ったのに西野の一存で無料にしてしまっていいのか」といった点とか。これはこれで大きな問題なんだけど、僕の語れる分野じゃないので、今は語るつもりがない。

今回語るつもりである炎上の「二層目」、つまり、僕が「炎上ではない」と言いたいのは……

「正当な手順を踏まないどころか、ついでに正当な手順を踏んでいる人たちをこき下ろしたこと」
です。

まずそもそも。
西野の「ここまでの」ビジネスの流れは、正直「上手い」。
自分の知名度を活かして、
クラウドファンディングで出資者を募り、
プロデューサー的立場を兼ねて、


一冊の作品を作り、かつそれが売れている。

多分、色々な人……特に自分で絵を描いている人にとっては悔しくなるほど「力押し」だけど、そのやり方を否定することはできなかったんじゃないかな。


「何も間違ったことしてない」から。
「それがビジネス」だから。

知名度を活かすのは悪いことじゃない。誰でもやっていることだ。作家も、イラストレーターも。
クラウドファンディングで出資を募るのは悪いことじゃない。言うまでもない。
自分は絵を描いていないのは悪いことじゃない。分業だ。

このあたりにも詳しい。

blogos.com


細かく見ていけば良くない点はあったのかもしれない。
でも言ってしまおう。

今回の件に比べれば、きっと些細なことなんだろう。
今回の件より「酷い」ことは、そうそう起こってないだろうから。

さて、ようやく本題。

もう一度繰り返しますが、
「『作品を無料にしたこと』で、西野は批判されるべきではない」

よしむらかな氏が指摘する通り、自著である『ブラックジャックによろしく』を無料にするという手法をビジネスとして試した佐藤秀峰氏を批判する人なんて、誰もいない。


それが有効な手段だと納得させるための「言葉」をしっかりと佐藤氏は語っている。

漫画家・佐藤秀峰が語る「ブラックジャックによろしく」無料化の裏側 - 「eAT KANAZAWA 2013」密着レポート【6】 | マイナビニュース

それは誰もが納得できるものだったし、仮に納得できなかったとしても、佐藤氏を批判する権利は誰にもないだろう(裏での権利関係が明らかになっている限り)。

※この「裏での権利関係」については、先程語った西野騒動の「炎上の一層目」の方に属する問題です。念のため。

でも、今回西野は「批判」された。

何故か。

バカにしたからだ。

そもそも。
クリエイターは、本来、作品しか武器がない。

自分で作品を作って、
「その作品が売れることでしか、自分の名を売ることはできない」。

誰もが理解している。
西野の絵本がここまで売れたのは
「彼に芸人としての知名度があったから」だ。
一種の邪道だ。
それでも、何度も何度も言うが、それは決して悪いことじゃない。

「知名度」という、
・本来創作業界で生きている人が欲しくてもなかなか手に入らない圧倒的武器をひっさげて
・業界に土足で踏み込んできた
ここまでで「嫌な話だなぁ」と思っていたクリエイターの方々はかなり多いはずなんだけど、それでも批判されるべきことじゃないってのはほとんどの方が理解していたはずなんです。

でも。
そんな立場の人間が。
・本来創作業界で生きている人の正当なやり方を
・業界での正当な生き方を

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軽い言葉で。
ノリで、「ウケそうな言葉で」、踏みにじったわけです。

「その業界(出版業界等)のやり方がおかしい!」と西野が思って順序立てて批判するならば、誰も何も言わなかったでしょう。
でも、そうじゃない。

ブログだと無料化した経緯や、自分の正当性がある程度論理的に語られているけど、
だとすると「キャッチーな言葉」には意味がない。正当に理解させるつもりなら、そういった言葉は妨げになるだけだ。

そもそも。
「お金の奴隷解放宣言」ってなんだ?
「お金の奴隷」ってなんだ?

断言するけど、今回の件は「この一言」が無ければそこまで広まっていなかった。
無料にすること自体は、はっきり言って現代において「何の新規性もない」のだ。
もともと「ビジネスとして成立しているモデル」だから。
※ちなみに佐藤氏の話をすると、「全編フリー素材にします!」は新規性の塊だったし、あの時期は確かまだここまで無料モデルが広まっていなかったから結構な新規性があった。


じゃあ何故西野はこの一言を入れたのか?
「お金の奴隷」なんていう、消費者も創作者もバカにした物言いをしたのか?
別に彼が共産主義に目覚めてるならそれはそれで構わないし、淡々と共産主義のメリットを語るならば自由にどうぞなんだけど。

なんで、それもせず、ただ一言、こんな……
「創作の苦労を知っている人なら」
「お金の苦労を知っている人なら」
誰もが不快に思う言葉を入れたのか?

炎上商法狙いか、そうでないならば、「ノリ」だろう。
最近の西野の動向を見ていると、後者の可能性が高い気もしてきたが……


さて。
長々と語ったがそろそろ結論に入ろう。

今回の件、「お金の奴隷解放宣言」において、西野は「炎上」していない。
「炎上」は火が消えてオサラバだ。
だけど、違う。

「炎上」なんかじゃない。
バズじゃない。
バズにしちゃいけない。
これは数多のクリエイターからの「抗議」だ。
数多のクリエイターの「声」だ。


「抗議」を、「声」を、「炎上」で終わらせちゃいけない。


西野は出版業界に「戦争」を仕掛けている。
「知名度」という圧倒的暴力を使って、既存のビジネスモデルを、思いっきりバカにした。


既存のビジネスモデルを「知名度」という、普通のクリエイターは作品でしか持ち得ないモノで壊した。
外側から持ち込んだ爆弾だ。

でも。
その「爆弾」を使った事実を「周到に忘れて」、あるいは「周到に無視して」
「なんとなく良い言葉っぽい、それだけの言葉で、飯を食ってる人々のビジネスを根底からバカにした」。

もっと言うなら。
「普通に働いて、普通に稼いで、普通に生きている、普通の人たち」の暮らしを、彼はバカにしたのだ。
ましてや彼は「普通に働いて」得たカネじゃないカネで作った作品を踏み台に、それをやっちまったのだ。

もっともっと、抗議しなければならない。
この問題は、放置していると確実にすり替えられてしまう。
確実だ。

確実に、
「『無料化』という『ビジネスモデル』が批判された」という構図に置き換えられてしまう。

僕はそれを最も懸念している。

違うんだ。

軽い言葉が、キャッチーな言葉が、「普通に生きざるを得ない人たちの、『普通の、正攻法の仕事』」を奪うんだ……

それは決して、新しい「ビジネスモデル」が招くものじゃない。
それなら誰もが、まだ納得する。
でも、そうじゃないんだ……。

ということで、「火が消えてしまう」危機感から、この記事で語りました。大体よしむらかな氏の意見を長くしただけになってしまったけど……

ということで、この記事は一旦締めます。
お読み頂き、ありがとうございました。