Minakami Room

旅を続ける。考える。自由である。生きている。

『鬼滅の刃』を絶対に読むべき理由

どうも、Mistirです。

週刊少年ジャンプで、明らかに「異色のオーラ」を放っている漫画がある。
そのマンガはかつて誰もが「打ち切り」を確信した。
僕もその一人だった。

誰もが言った。
「少年ジャンプ向きじゃない」と。

でも。
そのマンガは、ついに上り詰めた。
純粋な、マンガとしてのオモシロさ。
それだけで……
ついに、誰しもが打ち切りを確信していたそのマンガは、少年ジャンプの表紙にまで上り詰めた。

そのマンガのタイトルこそ。

鬼滅の刃 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

鬼滅の刃 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 『鬼滅の刃』だ。

 表紙に上り詰めたときがコレ。

週刊少年ジャンプ 2017年1月30日号 7号

週刊少年ジャンプ 2017年1月30日号 7号

 

 今回は、このマンガについて少しばかり「アツく」語ろうと思う。

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いい機会なので過去記事をまとめてみる

ども、Mistirです。

凄く読者数増えました。凄いね(他人事)。
……いや、ホント、お読み頂きありがとうございます。

読者数が凄く増えたので、一度過去記事の中でよく読まれたものをまとめてみます。
お酒でも飲みながら読んでみてね。

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キングコング西野の件は「炎上」では足りない

ども、Mistirです。

話題になっていますね。
キングコング西野さん(以下敬称略)。

「金の奴隷解放宣言」って。

……あまりこの記事に時間をかけるつもりはないので、知ってる人向けに語ります。
これまでの経緯を知らない方は調べてみてね。

で。
僕は、言いたい。
コレは「炎上」で終わらせてはいけないことだって。

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結局、生きるには力がいるのだ

魔王「力が欲しいか」
ワイ「どの組織にも依存せず手取り20万稼げる力ください」
魔王「……お前、それは欲求高いぞ」

ども、あけましておめでとうございます。
Mistirです。

最近、色々なことがあった。

そのとき、徹底的に、頭が擦り切れるほど「自分が何をしたいのか」を考えた。

その結果。

「何もしたくない」

と気付いた。

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5年経ったからこそ語る、『あの花』という作品

ども、Mistirです。

Fire TV Stickを買い、プロジェクターに接続し、悠々と100インチのスクリーンに投影する。
そんな贅沢なライフを送ってます。

で。
最近ようやくNetFlixあの日見た花の名前を僕達はまだ知らないを観た。

 実は、僕が最も苦手なタイプの作品だ。
こういった「お涙ちょうだい」は非常に、なんというか、向いていない。

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成宮寛貴に対するグレート・サスケの発言が、ちょっと(相当)危険だ

こんにちは、Mistirです。

ウチにはテレビがないので、芸能ニュースには関心が薄いのですが……
「ちょっとこりゃマズイな」と思うニュースがあった。

グレート・サスケが「息子が過去に成宮寛貴に襲われた」と明かしたそうなのだ。

でも、これは明らかに変だ。

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炎上した「うな子」のCMを冷静に分析する気にならない

ども、Mistirです。

なんか……また、どこかのCMが話題になったようですね。

www.huffingtonpost.jp

通称、「うな子」
一応公式ページは削除されたらしいので……ここで別の方がアップロードされたものを貼るのはやめておきます。

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日本一残念なボールペン「ジェットストリーム・プライム」の中身を最大限に活かす方法

ども、Mistirです。

さて、以前三菱鉛筆の「ジェットストリーム・プライム」をボロボロに批判する記事を書きました。

 

mistclast.hatenablog.com

 



実は、この記事は当ブログの中では結構長いこと読まれています。
残念に思う人が多いんですかね。
それとも、「ジェットストリーム プライム」で検索するとかなり上の方に来るからか……

それはそうとして。

一向に三菱鉛筆さんが「カッコいい」外装を出すことが無さそうなので……

そろそろ、断言しましょう。

ジェットストリームの芯を最大限に活かす、最高のボールペンについて……

それは、このボールペンであると。

ヘルベチカ ヘルベチカ多機能ペン4in1 赤

ヘルベチカ ヘルベチカ多機能ペン4in1 赤

 

 

由緒正しき日本の文具メーカー、伊東屋のヘルベチカ、多機能ボールペンです。

私は白を使っています。

黒もあります。

ヘルベチカ ヘルベチカ多機能ペン4in1 黒

ヘルベチカ ヘルベチカ多機能ペン4in1 黒

 

 

最初はキレイな外装に入ってます。

 

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で。
モレスキンと組み合わせてみると……

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結構色気あるでしょ?
このミニマル感のあるモノトーンデザイン……(うっとり)
真鍮製の重々しさ……(うっとり)

書き心地は、そのまんま。
ジェットストリームです。
ジェットストリームに差し替えて使うのですから、当然ですが……。

最初に入ってた芯?
……まぁ、ごく普通の油性だったような……忘れました。
 
さて。
このボールペン、いわゆる振り子式で、使いたい色を上に向けてノックすると、その色が出てくるタイプです。
このシステムには好みがあるとおもいますが、やっぱカッコいいですよね。


……何より……
このシステムを採用しているおかげなのか……
超細い!!

この細さで三色+シャープペンは衝撃的です。
……まぁ、私はシャープペンをめったに使わないのですが……

そして、実売価格4000円強。
これはライバル製品であるLamy の4色ボールペンよりも安い価格です。

安さだけで言えば……
これ。

ステッドラー 多機能ペン アバンギャルド 927 AG-BB  ブラストブラック

ステッドラー 多機能ペン アバンギャルド 927 AG-BB ブラストブラック

 

ステッドラーのアバンギャルド。
これも良いボールペンなんですよ。

……クリップを、除けば。

なんですかこのクリップ。
クッソ硬い。
だからって強引に広げようとすると……
取れる。

くっついてるだけじゃねーか!飾りか!
……

手帳などにクリップで挟む人にとっては、致命的です。
なので、このボールペンを買うのであればヘルベチカでいいと思います。
細くてカッコいいし。


スタイリッシュでもあり、機能的であり、シンプルでもあり、ゴージャスでもある。
ってことで。
私にとってのジェットストリームの最強外装はこれだ!ってお話でした。

さあ、次は貴様だエナージェル。

最強のゲルインキボールペンはエナージェルだと思ってます。
君の見た目がゴージャスになる日を、僕は首を長くして待ちながら……同時に色々検討してみます……フフフ。
文具は改造するもの。

お読み頂きありがとうございました。
ではまた次の記事で。

【追記】
ってことで、頑張ってゲルインキでこのボールペンを使いたいってことで探してみました。

ハイテックC04金属レフィル ブラック LHRF20C4B

ハイテックC04金属レフィル ブラック LHRF20C4B

 

 

はい、これで楽しくゲルインキでこのペンを使ってます。
めでたしめでたし☆
もちろん赤と青もあるよ。

 

ハイテックC04金属レフィル レッド LHRF20C4R

ハイテックC04金属レフィル レッド LHRF20C4R

 

 

ハイテックC04金属レフィル ブルー LHRF20C4L

ハイテックC04金属レフィル ブルー LHRF20C4L

 

やったぜ。
……速乾性の高いエナージェルの4c互換替芯も、できたら早く発売してくれないかな……


【追記】
かなり長いこと上記ボールペンを使っていたのですが、色々弱点も見えてきたのとそろそろ寿命ということもあり乗り換えました。こちらもよろしくです。

mistclast.hatenablog.com

 

映画『シン・ゴジラ』を観て号泣したから熱く分析する

ども、Mistirです。

映画『シン・ゴジラ』を観てきました。

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はい。

泣きました。
号泣です。
ボロッボロ泣きました。

「あー、この映画みて泣いてる人多分他にいないんだろうな……」
恥ずかしく思いながら周りを見ると……やっぱり、泣いてる人はあまりいませんでした。

何故泣いたのか?
それは、この映画があまりにも明確に、一つの結論に向かって……まっすぐに突き進んでいたためです。
極上のエンタメでもありながら、同時にあまりにも強い「思想」が示されていた。
全てのパーツが、全てのシーンが、一つの結論を描いていた。
映画のギミックも、事前の印象も、「利用できるものは全て利用し尽くして」
その「思想」がはっきりと理解できた時……僕は泣くしかなかったのです。

これは語らねばならない。
……ってことで、語ることにしました。
しばし、お付き合いください。

【注意!】以下、多数のネタバレが含まれます。
必ず観終わってからお読みください!

 


































 

 

 

 

 

【本編開始】

 

1.プロセスと「個」-The Process and Pieces-

※ここから語るのはあくまでも「分析」であり、考察ではありません。
「牧教授とは一体何者だったのか?」といったような本編ではグレーの要素に関して語るつもりはございませんので、ご了承ください。


さて。みなさん。
シン・ゴジラ、いかがでしたか?

事前情報だと某超B級映画バトルシップ辺りとよく比較されていて、「B級チックなんだろうな」と思っていました。

バトルシップ [Blu-ray]

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 事実それは遠くなくて、ラストバトルなんかは明らかに「超B級」要素が含まれていて、笑うしかないシーンなどもあります。


でもそれも含めて、やっぱり「計算づく」であって、映画そのもののパーツとしか思えないんですよ。
最終的に全てがつながってくる。
順に語っていきましょう。


僕は庵野的な描き方に詳しいわけではないのですが、映画冒頭からやっぱり何か露骨に癖のある現実の描写が繰り広げられていることがわかります。

ひとことで言って、ねちっこい。
ねちっこくて、矢継ぎ早。

「いや、そんなところテロップいらんでしょ!」ってところでもなんか妙にカッコいいテロップが表示され、説明される。
速すぎて読めねえよ!

矢継ぎ早にシーンも展開も切り替わりますが、同時に「人」も切り替わります。
たくさんの人物が登場しますが、……ぶっちゃけ、たくさん出過ぎて覚えられませんよね。
かろうじて主役(っぽい人)が誰か理解できるくらいです。
「あ、この人ヒーローっぽいこと言ってる!」

※以下、登場人物の画像はこのサイトより引用いたします

cinema.ne.jp


主人公、矢口。

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彼は理想に燃えるいわゆる「ヒーロー」の役割として描かれます。
そのおかげで、なんとなく政府上層部のグダグダ感、意思決定の遅さが……とっても悪い印象で僕らに伝わってくるんですよね。

矢口がいくら「正論」を言っても聞き入れない「上層部たち」。
これがこの国のやり方なわけです。

……が。

それって別に不自然なことじゃないんですよね。
っていうか、現実的に「巨大生物の可能性が」なんて、信じる役人がいたらその方がびっくりです。

この段階では「個々に行われる」会議の「グダグダ感」が妙に「リアルに」繰り返される。
ヒーローは異物です。
ここでは観客はニヤニヤしながらイライラするしかないわけですね。

ホンットに露骨でわかりやすいのが、初期形態のとてもキモいゴジラに発砲しようとするシーン。

「射撃許可」を求めるプロセスの、アホらしいほどの多重の面倒くささ。
こんなに射撃許可の多重性(テンポの悪さ)をしっかり、ねちっこく、めんどくさく、そして同時に……テンポよく描いた映画がかつてあったでしょうか?
もはや音楽的でさえあります。


このシーンは、ギャグでもあり、リアルでもある。
そりゃあ、実際に民間人がいて、市民がいたら……射撃許可は「あんな感じ」にはなっちゃうでしょうね……と。
なんとなく、そう納得させる「リアリティ」がある(実際に総理大臣がその許可を与えるのかはわかりませんが)。

もしかすると、あそこで射撃してたら……あの「キモい形態ゴジラ」には効いていた可能性がある。
……と。
この流れで考えてみても面白いのですが、あのシーンは
「意思決定一つにも恐ろしいほどの多数の『個別な』要素が絡んでいる」ということだけ覚えておけば良いと思います。

薄々気づかれていると思いますが、僕がこの映画で語りたいのは
「個」について
です。

ここで首をかしげられた方もいるかもしれません。
この映画は……どっちかというと、「集団の映画」というイメージが強い。
でも、その裏側にあるのは「個」なんです。

とりあえず、意志決定のグダグダから既に、物語の「最後のメッセージ」まで繋がっているんですよ。
後でじっくり語るので、覚えておいて下さい。

さて。
グダグダを繰り返しながら、「巨大不明生物特設災害対策本部(巨災対)」が発足されるところまで話は進みます。

ここで僕はグッときちゃった。
「うわあああああすっげえスムーズに切り替わった!」
……そう。巨災対が発足されると、映画は「政治劇主体」からごくごく違和感なく「ヒーローたちの活躍」へと切り替わります。

イライラの政治劇から、エンタメへ。


「テメーらどうせ出世無理だから自由にやれキモオタども!!!!(どんなセリフだったか正確に覚えてなくてすみません……)」的なセリフで一気に切り替わるわけですね。

まあ、ここで「エンタメ」へ流れてはいきますが、それでも政治劇が終わるわけではなく……むしろ悪化していくのですけれどね。
でも、この時点で僕は「ここからはヒーローたちの映画と政治劇がシームレスに繰り広げられていくんだ!」と解釈したので、その後の細かいアラが気にならなくなりました。

例えば……

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クオーターで超有能なカヨコさん。
……というかもう「石原さとみ」さん。

彼女の英語とか。
彼女が所属しているのがほぼほぼ100%「エンタメ」側の世界であると考えると、違和感はなくなります。

とまぁ、ここからはエンタメと政治劇が並行して進みます。
そして……

ふたつ目の戦いが、幕を開けるのです。

さて、この章では「積み重ねられていく『個』について」語りました。
矢継ぎ早なシーン、テロップによって、意思決定一つにも馬鹿みたいな数の『個』が積み重ねられている」ということがリアルに描かれている。
それだけ覚えていてくだされば問題ありません。

では次の章。
この映画が「何と戦っていたのか」という問題です。

2.第二の戦争 - The Second War -

……さて。
映画中盤から、戦いは「ゴジラとの戦い」だけではなくなることに気付いていましたでしょうか。

イムリミットとの戦い。
イムリミットを迎えると、どうなるか?

そう。
国連によって、核が落とされます。

全てを無に返す、圧倒的な「暴力」。
「一個の力」。
ゴジラとの戦いと並行して、この「力」との戦いが描かれているわけです。
ここからは、ゴジラとの戦いと並行した「第二の戦争」が始まっています……

……と、色々語ろうとしましたけど、やっぱりこの「第二の戦争」に関してはラストバトルに全ての文脈が含まれています。
その中で語ったほうが良い気がしました。

ってことでさっさと次章に進みましょう。

3.決戦 -The Last Battle-

最終決戦。
爆笑シーン、「無人在来線爆弾(流用)」も登場します。
インパクトが半端ない。

dic.pixiv.net

こんなん笑います。

B級映画ファンどもが僕に散々シン・ゴジラを勧めてきた理由の9割はこのシーンです。
……多分。

このシーンは初代ゴジラのオマージュとか色んな意味があるらしいですが……
僕は、少し違うものとして見ています。
っていうか、その解釈だとこの爆笑シーンが泣けてしまうのです。

後で語りましょう。

さて。
この「ラストバトル」。
気付きましたか?

全てが「個」によって形成されている……
まるで、アリの大群が牛を倒すかのように。
使えるものを、全て使って。
全て壊して。


このラストバトル、「ヤシオリ作戦」の流れは以下の通りです。

  1. 無人新幹線線爆弾で足止め
  2. 無人飛行機で消耗させる
  3. ビルで足止め
  4. 第一次注入
  5. 無人在来線爆弾(パワーワード)で足止め
  6. 第二次注入

最終的な目的、「凝固剤の注入」は、身も蓋もない言い方をすれば

・たくさんのストローをゴジラの口に突っ込んで薬を飲ませる

……それだけの、恐ろしいくらいに……「地味な」話です。
ちなみに、もしも核兵器が使われていたら?

  1. 核兵器爆発

……おしまい☆
一撃で終了でしょう。
東京ごと。

……さて。
何故わざわざ、この映画では決着方法がこんなに「地味」で無ければならなかったのでしょうか?
「経口投与」って聞いたら、ミサイルとかに薬を載せて口を狙う……とか、そういうのを想像しますよね?

でも、恐ろしく「地味」な絵面を選んだ。
プロセスはド派手ですが……結末は、ここまで「地味」。

考えてみてください。
核兵器は、国連という、世界という「集団」から生じる圧倒的な「個」の暴力です。
※ここでいう「核兵器」は劇中での「核兵器」です。

一方、ヤシオリ作戦では……徹底的までに「個」が反復されているんですよ。

新幹線が。
無人飛行機が。
ビルが。
山手線の電車が。
そして、自衛隊員たちが。

アリの群れのように、ゴジラに戦いを挑んでいる……。

ここまで映画を見ていた人たちならば、分かるようになっています。
この映画、序盤で「無能っぽい」と見せかけていた人たちも全て一人ひとりが「個」として、働いているんですよ。

例えば、総理代理。

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もう誰がどう見ても無能キャラで、何故か伸びたラーメン食べてますが(エヴァネタ?)、外交上大きな役割を担います。

途中で死んじゃう総理も、国民のことを本気で考えた結果、全ての行動が成り立っていたことが分かります。

一部の『シン・ゴジラ』批評で、この映画が「カリスマ(≒矢口)によって救われる、一人の指導者を求める映画だ」と批判されていましたが……

私の意見は、全くの真逆です。

その象徴が、このセリフ。

「次のリーダーがすぐに決まるのが強みだな」

このセリフは皮肉っぽく使われていますが、以下のセリフと組み合わせると、印象が変わる。

「礼は要りません。仕事ですから」

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 一人ひとりの恐ろしく心強い「個」が、それでも……あくまでも……「集団」で、「仕事として」動く。

この考え方は極めて「日本的」であり、批判されやすい考え方でもあります。
でも、この映画ではそれを心底「理解した」上で、再構築したようにしか思えないのです。


国連軍が使いたくて仕方のない「核」は、
「集団(≒国際社会、国連)から生じた圧倒的な『一個の』暴力」です。

……「ヤシオリ作戦」で描かれているものは、真逆ではないでしょうか。
使える知力を、力を、全て使い果たして……アリのような「個」が、巨大な「力」に戦いを挑んでいる。

これは、個人主義でも集団の過剰な重視とも、また違う「第三の考え方」とも言えます。

一人ひとりが最強の「個」が、名前のついた「個」が、それでもあえて「集団として」……一人ひとりの「存在」を薄めながら……動いている。

さあ、ここからこの「分析」の結末です。

思い出してみてください。

パラパラと「流されていく」シーンが。
観客の頭からも忘れ去られる人の名前が。
地名が。
無用な会議が。
犠牲者が。
その全てが。

数本のストローへと、結実する。

知力・自衛隊員の命・人々の思い、あらゆる……「プロセス」を結実した、「ストロー」へと、思いを繋ぐ……。

本当に、「全てを」使いきっています。
高層ビルでさえ、新幹線でさえ利用する。
核という一個の「暴力」を拒絶し、使えるものは全て……全てを使い尽くす。

途中、ゴジラが活動を再開し、第一次注入隊が全滅する。

それでもなお、作戦は終わらない。

ここまでを踏まえて、伝説の爆笑名シーン、「無人在来線爆弾(流用)」を思い出してみてください。

ゴジラに比べると小さな……それでも数多の電車が、巨大なゴジラの身体をアリのように這い上がり、そして倒す。

そして……それだけ焼け野原じみた消耗を繰り返しても……それでも、人は「負けない」。
第一次注入隊の犠牲を払いながら、第二次注入隊の決死の作戦続行。

その結果が、誰一人喜ばない、勝利。
ハリウッド映画なら「FOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!」ってなっているシーン。

そんなシーンで聞こえるのは、全てを噛み締めるような、安堵の溜息……。

勝利のために、使い尽くした。
全ての資源を、使えるものを。
何もかも、使い尽くした。
これは勝利だったのか?何だったんだ?

誰もここに、ホントウの喜びはない。
なんかゴジラも立ってる。

でも。
喜びはないけれど。
それでも……!

ここで、物語を「理想の側面(≒矢口サイド、エンタメサイド)」と「現実の側面(政治サイド)」を「政治サイド」から接続する、独特な立ち位置で見つめていた「ある人物」が結論付けるのです。

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「この国はスクラップ&ビルドでのし上がってきた。今度もやり直せるさ」


これ聞いて、もう僕は涙が止まらなくなりました。

集団の偏重だとかなんだとか、色々批判される余地はあるでしょう。
それでも……この、ともすれば「無様で非効率な日本的やり方」が、ダメな部分を受け入れられながら……最後には新たなる形として結実されている。


地味でも。

使えるものを全て使って、無様に戦って、全てを使い尽くしても。
無様に負けたように見えても。
焼け野原になっても。


それでも、何度でもやり直せるさーー


なんという、地味でダサいメッセージだろう。
でも、それがあまりにも心に響いた。
何故なら、そのメッセージに、この映画が積み上げてきた全てが繋がっているのだから。

まとめます。

4.終わりに

僕は正直なところ、庵野にもゴジラにも思い入れはありません。
だからこそフラットに観た結果……「庵野的要素」や「ゴジラ的要素」を無視して分析していますので、一周回って深読みし過ぎの点もあるかもしれません。


まぁそれでも……やっぱり、無駄な程にねちっこく繰り返される「個々の『名付けられた(=テロップで示される)』」、シーン、人、場所、兵器、その全てが……

「無名」ではない、と。
そう語られているように思えてならないのです。

最強の集団は、最強の個で成立する。
集団に、名は必要ない。
それでも、名はある。

……といった、とにかく絶妙な集団と個の関係性が……個人主義」「集団主義」というような二元論に陥らず、描かれているように思えます。

この映画は日本を褒め称えるだけの映画?
いやいや、この映画は極めて丁寧にイデオロギーを排除していました。
原発問題なんかもほとんど絡めていない。
日本のやり方が必ずしも正しかったか?そういうことも言っていない。
改めて言えば、序盤の「発砲許可シーン」がなく、発砲していたならば犠牲者は半分以下になっていたかもしれません。

ただただ、主人公の理想が、「日本的なやり方」が、最後に至る場所……

何度でも、やり直せる。

この映画は、それを示しただけというのが僕の結論です。

僕はその結論に、何か熱いものが堪えきれず、涙した。

それだけで……十分なのです。

お読み頂きありがとうございました。
ではまた次の記事で。

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ

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