MistiRoom

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このままだと、軽減税率とインボイス制度でいくつかの地方が壊滅する

消費増税おめでとうございます!

いやー、日本って凄い。

日本人は生産性が低いだのなんだのボロクソにこき下ろされているところに、なんと「軽減税率でお前らの仕事を増やしてあげるぞよ」と、超絶怒涛の天才的ソリューションを与えてくださった政治家の先生方には涙が止まらない。
きっと日本人の生産性は100億倍になってみんなハッピーになるんだろうね。ははは。

 


皮肉はさておき

一部の人だけが叫んでる……というより、あまり「迫真」感が無い、……もっとはっきり言えば明らかにスルーされてる感のある「インボイス、やばい」ということについて、少しだけ語りたい。

どれくらいヤバいか。
地方でおそらく死者が出るレベルの話だ。
はっきり言って、2%の増税で庶民の生活が大変……とかいうレベルをはるかに超越してる。

……が、残念ながら「地方」という二文字の読み方を知らない人は (主にマスコミに) たくさんいるだろうし、多分地方で死者が大量に出るのはそこまで重大な問題ではなく、「庶民」の生活が切り詰められることの方がよっぽど重大なのだろう。
「庶民」とは都会に住んでいる人間の総称であり、「地方の人間」なんてものはこの世に存在しない。
死んでもどうでもいいと考えられている以上、そういうことなんだろう。

……今日は筆が滑って皮肉が多くなりすぎている。自重しよう。
さて、話を戻して。

インボイス制度がどうしてヤバいか。
端的に結論を言えばそれは「会社に属していない個人事業主等の事業者、特に『それほど稼いでいない』事業者の超超大幅増税」だ。
で、それが一番刺さるのは間違いなく、東京じゃなくて地方だという話をしたい。

とても雑なインボイスについての話

ググれば出てくるのだけれど、インボイス制度は少しわかりにくいのでここでざっくりと解説しよう。
少し面白くない話だから読み飛ばして頂いても構わないが、可能ならお読みいただきたい。

ものすごく雑なのだけれど、売上が1000万円以下の事業者は現状、消費税を国に納める必要がない。

「売上」であって、「利益」ではないことには注意していただきたい。
極論2000万円売上があっても仕入れに1900万円かかってたら利益は100万円ぽっちだ。
それでも、売上1000万円以上からは消費税納税の義務が生じる。

事業には仕入れが必要だわ、社員と違って保証もないわで、個人事業主はサラリーマンが言うところの「稼いでる」よりもずっと多く稼いでないと生活が厳しくなる。

例えば支払われる年金の平均額は、個人事業主とずっと社会人だった人間で月10万円差額があると言われている。
詳しくは「国民年金 厚生年金」あたりでググってほしい。

1000万円以下の売上は「かなり生活が厳しい」から、これまで免税されていた。

誤解しないで欲しいのだけれど、免税事業者でも「消費税を受け取る」のはOKだ。
むしろそれは大前提だ。

事業者は受け取った全ての消費税を国に納めるべきなのではなく、仕入れから控除される。
例えば先程例に出した「2000万円売上があっても仕入れに1900万円かかってたら」という例えの場合……
売上2000万円のうち消費税が10%として約180万円。
仕入れ1900万円のうち消費税が10%として約170万円
納税の義務があるのは約10万円だ。
とてつもなく雑な計算だが、要するに売上の10% (200万円) が丸々国に取られるというわけではないということだ。

だから免税事業者でもなんでも「仕入れに消費税を払う必要がある」は大前提で、そのことも考慮して「消費税は別途請求」というのが個人事業主では割と普通にある。

で、なぜその免税事業者が軽減税率で壊滅するかというと……

その「売上の10%が丸々国に取られるというわけではない」という仕組みを利用するために2023年以降「インボイス」の発行が必須になってしまう。
「インボイス」は軽減税率のために必要な仕組みということになっているのだけれど、免税事業者、つまり売上1000万円以下の事業者には発行できない。

だけど、どんな事業者も……それこそ、大企業も……否、利益率を公表し、株主から常に監視される運命にある大企業ならなおさら……
「売上の10%が丸々国に取られるというわけではない」という仕組みは絶対に使いたい。
当然だ。

「お前免税事業者?インボイス発行できないじゃん。じゃあ消費税払わないよ。だってお前に払った消費税、払ったってことにならないもん」
ということが起こるようになるわけだ。

要するに、事業者同士で監視・牽制させたいわけだ。
……ディストピアですね。

で、これは露骨な言い方をしているわけでも陰謀論を張り巡らしてるわけでもなんでも無い。

孫引きになってしまうのだけれど、財務省がはっきりそう言ってる。

財務省はインボイスの目的を「納税者同士で相互けん制を図る」と説明(全国中小業者団体連絡会交渉 2018年9月21日)。 

 

www.zenshoren.or.jp

インボイスは、信頼に基づく取引関係を変質させる、まさに消費税による“いんぼう”です。

ダジャレは別にしても、まぁ「血も涙もねえな」とは思う。

僕の話

さて。
僕はフリーランスエンジニアだ。
……フリーランスブロガー、と言いたいところだが……
ブログでの収益はあまりに少なく、とてもブロガーを名乗れるレベルではない。
(ないわけではないので、もちろんその分は帳簿に記載している)
おかねちょーだい

で、書く対象によっては取材費が半端ないことになるフリーランスブロガーはともかく、フリーランスエンジニア……特に自分の技術力で「モノを作る」タイプのエンジニアは、正直なところ「仕入れに必要なコストはこの世にあるあらゆる事業者の中ではかなり少ない方」ではあると思う。
自分と自分の知性こそが資本だから、当然と言えば当然だ。

もちろん、エンジニアとはいえ仕入れというか経費は結構かかる。
資格取得に数万円、数十万はザラな世界だ。そして、「その資格があれば年商は百〜数百万単位で変わってくる」という資格もザラにあったりするし、フリーランスをやってみるとごっそりお金が減っていく。

とはいえ、「仕入れたものを売る」という小売業と比較すると……エンジニアやIT関連のような一部の事業者が免税事業者から外されるコト自体は「しゃーないのか」と思わないでもない。

ただ。
いくらなんでもこんなドサクサ紛れにも程があるやり方は微塵も肯定できない。

いずれにせよ、このままでは2023年以降数十万円単位で僕の収入は減る。
それまでに売上1000万円超えてたらいいんですが……
誰か1000万円僕の口座に入金してくれませんかね?
だめですか。

僕の話はこの程度でいい。
それよりも……
僕が本当に話したいのは、ここからなのだ。

青色申告宣言の町、という看板を見たことがありますか

子供の頃、家族の車に乗せられて走っているときに「青色申告宣言の町」という看板をどこかで見かけた記憶がある。

www.google.com

「青色申告って何?」
その疑問に対する回答を、僕は覚えてはいない。
きっとわからなかったのだ。

それから十数年以上の月日が流れ、僕は社会人になってからバイクを購入し、3年間で5万km以上の距離を走っている。
一時期はそのせいで預金残高が10万円を割ったのは、また別の話だ。

いろんな地方を走る。
そして子供の頃に見かけた「あの」看板を、地元からはるか遠く離れた土地でも見かけた。

「青色申告宣言の町」。

そもそも「青色申告」とは何か?
大人でも知らずに生きていける。そう、社員ならね。
でも個人事業主など、自分で納税の義務がある人は避けては通れない……正確に言えば、避けると滅茶苦茶損する仕組みが「青色申告」だ。

納税の申告には「青色申告」と「白色申告」があるのだけれど、「青色申告」は要するに「納税額はあなたたち(納税者)自身にきっちり算出してもらう代わりに色々お得にするよ!」という仕組みだ。

一方「白色申告」はあまりお得にならない代わりに記帳がラクにできる……という名目だったが、制度変更やら何やらで「ただ単にあまり得じゃない仕組み」になっている。

要するに、「青色申告宣言の町」の看板は。
「お前ら記帳ちゃんとしろや!!!!納税しろや!!!!さもないと……」
という殺伐とした看板なのだ。

で、ここからが問題だ。

少なくとも僕は「青色申告宣言都市」という看板を、東京23区内で見たことがない。
もしかしたらあるのかもしれないが、少なくとも。
僕が見たことがあるのは、どこも……

控えめに言って、「田舎」だった。
少なくとも、煌々と夜に輝くビルなどないような、「田舎」だ。

そりゃ会社より個人経営の商店が多いよね、というような、田舎だ。

考えても見てほしい。
そんな田舎で、みんな個人だったり、家族だったりでお店やってて。

売上1000万円超えてるところがいくつあるのか?

にも関わらず、地方の自治体は「納税しろ!!!お前らを監視しているぞ!!!」と看板までおっ立っててアピールしている。

そういえばこういうのもあったね。
これも「青色申告宣言の町」と本質は全く同じだ。笑えるけど笑えない。

togetter.com


それだとまだまだ足りず、「相互に監視」まで必要らしい。

果たしてその発言をした財務省の人間は「青色申告宣言の町」という看板を見たことがあるのだろうか。
そしてその意味を考えたことがあるのだろうか。

あるのかもしれない。
あるのなら……
多分、血が青色なのだろう。
そういえば「血税」って言うよね。……別に上手くもなんともないな、これ。

今後の展望

今後のことを語っても、全ては仮定に過ぎない。
だけど今後のことを語ることが無意味だ、というのも仮定に過ぎない。
だったら少しくらいは語ろうと思う。

はっきり言って軽減税率はクソ制度だし、それはみんな分かってることだから、希望を持って見ればめでたく一律10%になるんじゃないか、と思っている。
(それは与党や財務省の思惑通り、とかいうのは置いといて)

そうなるとインボイス制度の口実もなくなるから、免税事業者はこれまで通り免税されたままになる。

正直、インボイス制度が始まるよりも、あまりにもクソな軽減税率が続くよりも、10%になってくれたほうがよっぽどいいと個人的には思っている。

だけど僕には今のところ、軽減税率自体が「免税事業者制度消滅」の隠れ蓑にしか見えず、相当グダるんじゃないかという気もしている。

めでたく消費税が据え置かれた新聞社が「インボイス制度はヤバすぎるぞ!」とちゃんと叫びまくっている……
という話も聞かない。
もしかしたら言ってるのかもしれないけど、少なくとも僕は知らない。

もう少し経って……ようやく大騒ぎが始まるのかもしれない。

あるいは。
僕はこれが一番「リアル」だと思っているのだけれど。

いくら地方にダメージが与えられても、どこにも届かないのかもしれない。

シャッター商店街、という言葉が少し前に流行った。
最近はそれすらも聞かなくなってしまった。
日常に溶け込んでしまったからだろうか。
ウチの地元にもいくつかのシャッター商店街がある。

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これは我が故郷、兵庫県高砂市の商店街。
帰省したときの写真だ。
営業しているところもポツポツあるが、閉まっているところが非常に多い。

ニコニコ動画で有名なパンツマン氏が観光に行っているので、観てみると雰囲気がつかめると思う。

www.nicovideo.jp


ここに限らず……
シャッター商店街で、かつてお店を営んでいた人々が今、どうやって生きているのか。

それを知る人間は。
ほとんどいないのだ。

今後もどうせそうだろう。
地方でお店が大量に閉まっても……

dic.pixiv.net


知りようがない。
「報道」とやらはこういったことは教えてくれない。
そもそも、誰も興味がないのだろう。

こうやって騒いでる僕ができることは……トートロジーだけど、こうやって騒ぐことだけ。
そしてたまに地方に行くことだけだ。
そんな僕に何も言う権利は無いのかもしれない。
無いのかもしれない、けれど……

一言だけ言うとしたら……


全く、何もかも、クソッタレだよ、ホント。


お読みいただきありがとうございました。
ではまた。