Minakami Room

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一冊の「体験」……『嫌われる勇気』続編、『幸せになる勇気』

こんにちは、Mistirです。

びっくりしました。
まさか、あの本の続編が出るとは……

岸見一郎、古賀史健ーー
『幸せになる勇気』

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

 

あまりにも圧倒的な……少々異常な売れ方をしていたあの本。
評価が割れて当然な「書籍」にも関わらず、2016年2月の段階で1200件近くのレビュー。
そして驚愕の平均値、4.3。

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

 

あまりにも胡散臭いそのタイトルと裏腹に、理詰めを突き詰めたようなその内容……

止まらない納得。

そして、ギャグに近いキレッキレの演劇じみた対話。

と、僕はこの本が大好きで何度も読み返しているのです。
基本的に「流行ってるものは批判する」、ダメな中学生的精神をこじらせた傾向のある僕ですが、それでもこの本は大好きなんです。
詳しくはこっちのブログで読書録を書いてます。

mistir-library.hatenadiary.jp


で、まさかその本の続編が出るとは!
さっそく買いました。
そしてさっそく読破いたしました。

結論を言うと……
「時間が経って、冷静に考えたらおかしくね?……と、そろそろ批判したくなった辺り」を丁寧に拾い上げ、そして解説する純粋な「続編」です。

相変わらず平易なコトバで語られるその思想は本当にテンポが良い。
だけど……

難解になってます。

なんせメインテーマが「愛」ですよ。
「自立」ですよ。

「え、それって宗教じゃね?」
と思うでしょ?
思ったでしょ?
一章のタイトルが、アドラー心理学は宗教なのか」だからね。こっちの気持ちを読んでやがるぜ……
しかも、「アドラー心理学は宗教ではない」の根拠に「物語の有無」を持ち出してくる。やっぱり、普通じゃない。


しかも、「自分で仕事を選んで突き進んでても自立してるとは限らない」って断言してんすよ。

そんな思想がするっと理解できるわけがない。
平易なそのコトバを、僕は何度も読み返さないと噛み砕けないだろう。

今後どんどん、そういった方向性での書評は出てくるでしょう。
だから僕は……あまり語りません。

その代わり……
前回よりキレを増した対話の「聞き役」、青年の過激さが増していて、「ギャグに近い何か」どころかもう完全に「ギャグ」です。

青年
はっはっはっ 、これはお笑いだ !言うに事欠いて 、愛ですって ?ほんとうのアドラ ーを知りたければ 、愛を知れと ?
哲人この言葉を笑えるあなたは 、まだ愛を理解されていない 。アドラ ーの語る愛ほど厳しく 、勇気を試される課題はありません 。
青年
ぺっ ! !どうせ説教じみた隣人愛を語るのでしょう 。聞きたくもありませんね !
 

ぺって……お前、ぺって……

青年
(……)われわれは自分に自信が持てないからこそ 、他者からの承認を必要としているのですよ !
哲人
おそらくそれは 、 「普通であることの勇気 」が足りていないのでしょう 。ありのままでいいのです 。 「特別 」な存在にならずとも 、優れていなくとも 、あなたの居場所はそこにあります 。平凡なる自分を 、 「その他大勢 」としての自分を受け入れましょう 。
青年
… …わたしはなんら優れたところのない 、平凡な 「その他大勢 」だと ?
哲人
違いますか ?
青年
… …ふっふっふ 。よくもぬけぬけと 、そんな侮辱を口にできたものだ 。 … …いまわたしは 、人生で最大の侮辱に出遭いましたよ 。
哲人
侮辱ではありません 。わたしだって普通の人間です 。そして 「普通であること 」は 、なんら恥ずべきところのない 、ひとつの個性です 。
青年
軽口を叩くな 、このサディストめ ! 「お前はどこにでもいる平凡な人間だ 」などと言われて 、侮辱を覚えない現代人がどこにいる ! ! 「それも個性だ 」などと慰めを受けて 、真に受ける人間がどこにいる !

口に出して言ってみたい日本語
「軽口を叩くな 、このサディストめ !」

 青年
… …いや先生 、あなたはわたしの自制心に感謝しなきゃなりませんよ 。もしもわたしがあと 1 0歳 、いや 5歳でも若く 、これだけの自制心が備わっていなければ 、いまごろあなたの鼻骨はこの拳でへし折られていたことでしょう 。

ここ読んで笑わなかった人いるのか。
まさか電車で読めねえレベルとは……

 ……これは……この対話で笑っちゃうのは……アレだ。
彼岸島とかグラップラー刃牙(厳密に言えば範馬刃牙)で笑っちゃうアレだ。

matome.naver.jp


でも、バカにしてるわけじゃない。
この自己啓発本が『嫌われる勇気』から凄まじいのは、「物語として面白い」って点だと思う。
小説として、読めるんです。

僕らが潜在的に抱えている「疑問」という伏線が青年の手によって洗い出され、解き暴かれる快感。

全てが一点に収束する、感動。

そういった意味合いで、この本は本当に贅沢な一冊の「体験」なのだと思います。

是非とも前作を読んでからお読みいただきたいですね。
そしてじっくりこの本について語り合いましょう。

最後に、キレッキレな青年の名言を引用してこの記事を終わりましょう。

青年
要するに 「恋に落ちること 」は 、物欲に取り憑かれるようなものだと ?
哲人
もちろん相手は生きた人間ですから 、ロマンティックな物語を付与しやすいでしょう 。しかし 、本質的には物欲と同じです 。
青年
… …くっくっく 、これは傑作だ 。
哲人
どうされました ?
青年
… …人間とはわからないものですね !まさか隣人愛を説くあなたから 、こんな愚かしいニヒリズムの煮汁が染み出てくるとは ! !なにが 「人間の愛 」だ !なにが常識へのアンチテ ーゼだ !そんな思想など 、汚水をすするドブネズミにでも食わせておくがいい !

 さあ、みなさんご一緒に!

……くっくっく、これは傑作だ。

お読みいただきありがとうございました。
ではまた次の記事で。