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錦鯉の放流は何故「絶対に」あってはならないのか

こんにちは、Mistirです。


朝から嫌なニュースを見てしまった。

……。
絶句だ。

「何故、そこまで大袈裟な反応をするんだ?」と思われる方にこそ読んでほしくて、この記事を書こうと思う。

「数十年後の未来、錦鯉に埋め尽くされて、黒く濁った川で、錦鯉の駆除活動をしたいのならば是非続ければいい」、これはそういうレベルの問題です。
なんら、メリットがない。
強いて言うなら「パッと見て赤や青の魚が泳いでてわー綺麗ですね!」くらいの意義だろうか。
残念ながら、その光景はある程度でも生き物について勉強していたら、ゴキブリがうごめく光景よりもおぞましいものに見える。
もちろん、錦鯉は美しい。ただそれは、適切な場所で飼育されていたら……という条件付きだ。

本当に何故だ。

誰がどう考えても、街中に、山中にチワワが走っているのを見て「可愛いねぇ!」で済ませる人はいないだろう。
心底ぞっとするだろう。


錦鯉ならそうならないのは、何故なんだ。

「錦鯉の放流」、本当にこれは恐ろしいことなんですよ。
何故ここまで言うのか、しっかり説明します。

 

 
 

錦鯉の放流は、ブラックバスの放流よりなお恐ろしい

まず、過去の記事を読んで頂きたい。
時間のない方は、とりあえず保留しておいて、いつか読んで頂きたい。

mistclast.hatenablog.com

これは僕がかつて「泉佐野市の金魚放流イベントが何故『あってはならない』ことなのか」について言及した記事だ。
1万字に渡る記事だから、時間のある時で良いです。
今回の記事は比較的シンプルなので安心してください。

結論から言えば、放流が自然に及ぼす影響は……
「悪事」が知れ渡っているブラックバスも比較対象に入れると

金魚放流(影響小)<<<ブラックバス放流(影響中)<<<鯉放流(影響大、ただし状況に依存)<<<錦鯉放流(影響絶大)

程度の差があります。
そう、ブラックバスよりタチが悪い。

ブラックバスの放流はいけないことである」ってこと、知っている人は多いだろう。
まず、それは何故かをイメージして頂きたい。
何故、ブラックバスは放流が禁じられているか。

その上で「何故鯉を放流してはいけないのか」を考えると、よりイメージが付きやすくなると思う。
比較しながら、順に説明しよう。


鯉は雑食で、強い

ブラックバスは肉食で、主に小魚やエビ、水に落ちた昆虫を食べている。
鯉は何を食べているか、ご存知だろうか。

実は奴ら、わりと何でも食べる。
はっきり言って、鯉の食性なんて信憑性の検証もへったくれもなく「常識」だから、Wikipediaから引用するけど……

コイ - Wikipedia

食性は雑食性で、水草貝類ミミズ昆虫類甲殻類カエル、他の魚の卵や小魚など、口に入るものならたいていなんでも食べる。

f:id:Mistclast:20170503132725j:plain


本当になんでも食べる。

そして、食べ方が問題なのである。
金魚や鯉を飼ったことがある方は知っていると思うが、浮いている餌をバクっと食べる他に……
掃除機のように砂や泥を吸い込み、その中にある餌を食べるという特徴がある。

実は、この食べ方はかなり環境への影響が「強い」。
固有種の魚の卵もバコバコ吸い込んでしまう、ということだ。

また、びっくりされるかもしれないが、鯉は在来種と外来種の交雑種だ。
僕も最近「固有種としての鯉は琵琶湖等日本のごく一部にしか存在しておらず、しかもごく最近発見された」っていう事実を知って、物凄く衝撃を受けた。
須磨海浜水族園の展示で知りました。

もちろん、僕が言いたいのは「外来種は問答無用で駆逐すべし」みたいな単純な話じゃない。
ここから理解してほしいのは「交雑を繰り返して日本に定着してしまうような強い魚」だってことだ。

以下pdfを読んで頂きたい。
「世界の侵略的外来種ワースト100」だ。

https://www.biodic.go.jp/biodiversity/activity/policy/kyosei/23-1/files/1-10-2.pdf

以下の画像は抜粋したもの。

f:id:Mistclast:20170503123834p:plain

かの有名な「オオクチバス(ブラックバスのこと)」と並び、コイがランクインしている。

「世界の侵略的外来種ワースト100」は、Wikipediaの言葉を借りると以下の内容で選定されている。

世界の侵略的外来種ワースト100 - Wikipedia

世界の侵略的外来種ワースト100(せかいのしんりゃくてきがいらいしゅワースト100, 100 of the World's Worst Invasive Alien Species)とは、国際自然保護連合(IUCN)の種の保全委員会が定めた、本来の生育・生息地以外に侵入した外来種の中で、特に生態系や人間活動への影響が大きい生物のリストである。

公的機関のpdfをとりあえず最初に引用したけど、Wikipediaの内容がよくまとまっているから、こちらを見ていただく方が実は手っ取り早い。

そう、鯉は「侵略的外来種ワースト100」に入る、というより……
「侵略的外来魚ワースト8」に入っちゃっているような魚なのだ。

こちらの記事も読んでみて欲しい。

五大湖へ迫る外来種、アジア原産鯉の脅威|地球ニュース|Think the Earth

鯉の影響の具体例として分かり易い。
ちなみに記事に出てきている「ソウギョ」という魚は、とりあえず「超でっかいタイプの鯉」程度に認識して頂きたい。

結論を言おう。

鯉の放流は「世界レベルでブラックバスと同列に扱われているような生態系への負担の大きい魚を、喜々として放流しているに過ぎない」ということだ。

まして「錦鯉」の場合は、さらなる問題を孕んでいる。

選別の産物としての錦鯉

錦鯉はそもそも自然界には「存在」していない。
人間が「観賞魚」として、「鑑賞する」という目的のために、長い世代をかけて美しい鯉の遺伝子を固定したものが今ペットショップで買える「錦鯉」だ。
この過程はフナと金魚の関係によく似ている。

ただ、フナと金魚(一部を除いて)とだと、形が根本的に変わっちゃってるのがほとんどなんだけど……鯉と錦鯉は色以外ほぼ変わらない。
金魚は一部の品種を除いて、野生化することは「ほぼ」あり得ないって言って良いんだけど……錦鯉は違う。

十分に、野生化する。
……というか、してる。

個人のブログだけど、この辺りに目撃例。

ameblo.jp普通に見かけるのだけど、わざわざ誰もニュースにしないせいで、ソースを見つけ出すのにやや苦労してしまった。

「錦鯉が野生化して何が悪いの?」

っていう疑問には、この記事を読んで頂くしかないので、ここでは割愛する。
mistclast.hatenablog.com全く同じ問題だ。

少し難しい問題なんだけど、「鯉は侵略的外来魚として危険な種だから根絶やしにしろ!」と僕は言いたいわけじゃない。それは明らかに違う。
その生態系の中に元々(この「元々」の意味も難しいんだけど)鯉が存在しているのなら、可能な範囲で「不干渉」であるべきだと思ってる。

さっき「(錦鯉ではない)鯉の放流はブラックバスの放流より影響が大きい」って言ったけど、元々鯉が存在している川や池に少しばかり鯉を放流したトコロで、母数が少し増えるだけで生態系への直接の影響はそれほど無いと思われる。
勿論、遺伝子汚染の問題やら病原菌の問題があるから決して推奨はできないどころか「あってはならないこと」なんだけど……

一方、錦鯉の放流はその点「論外」だ。
だって、「錦鯉が『元々』存在している生態系なんて、いかなる意味でも存在し得ない」んだから。
それが最初に「チワワの走り回る街」で僕が例えたかったことだ。

その他の問題

病原菌問題

さっきちょっとだけ触れたけど、もうこれは……
鯉ヘルペスでググってください。
それで全て分かります。
……っていうか、錦鯉放流企画した奴ら、このニュースくらい聞いたことあるだろ……本当に何考えてんだ……

仮に鯉ヘルペスの危険性が無いことが保証されたとしても、病気っていうのは発症、蔓延して初めて影響が分かるもの。
迂闊にリスクを持ち込む理由がさっぱりわからない。

ここまでの問題を全て抱え込んで、以下の「最大の問題」が芽吹いてしまう。

子どもたちへの教育の問題

最初に引用したニュースを読んで最も恐ろしかったのはこれだ。
錦鯉を放流する、その行為は……

「山奥にチワワを子どもたちの手で放たせて、『素晴らしいね!』って言ってることと何一つ変わらない」のだ。

子どもたちは「善いことをした」と認識したまま大人になってしまう。

ここからは心底の気持ちで書かせていただくが。

何を考えてるんだよ。
本当に、何を考えてるんだよ。
主催団体、荒川の自然保護に取り組むNPO法人「未来の荒川をつくる会」。
あなた達は、本当に何を考えているんだ。

あなた達は「ちょっと調べたら分かる放流のリスクさえ考えられず、その『悪事』を善行と誤解しちゃうような子どもたち」を育てたいのか。

前、金魚の記事を書いた時に認識したんですよ。
本当に、この問題は……
「水族館や動物園に行ったり、生き物に関する本を読んでいたり、少しでも生態系に詳しい人なら即座にぞっとする」ことなんです。
でも、そういったことに興味や関心のない人は、本当に……何を言っても理解されない。何千、何万と文字を重ねても、聞く耳を持たれない。
興味を持たないのはいいよ。でも、微塵の興味もないなら「それらしい」ことなんて発言しないで欲しい。

最後にこれだけ言わせてくれ。

荒川の自然保護に取り組むNPO法人「未来の荒川をつくる会」よ。

生態系に興味も関心も無いなら、生きものに一生関わるんじゃねえバカ野郎!!!!

以上です。

一応の補足

このままでは「全ての放流はよくないことなのか」と言われてしまいそうなので、補足します。
放流が有効なのは概ね以下のパターン。

  1. 経済活動のため(鮎やヤマメの放流がこれに当たります)
  2. 危機的状況にある絶滅危惧種の繁殖のため、「遺伝子汚染のリスク覚悟で、専門家の立ち会いのもと」で行う場合
  3. 「完全に死んだ環境」をゼロから復活させる場合

鯉が放流されるのが有効な可能性があるとしたら、唯一パターン3の場合。
でも、今回のパターンはどう考えても3のパターンではなさそうですね。しかもそうだとしても、子どもたちにやらせるべきじゃない。3のパターンでは「正義」になり得る放流を、「瀕死の環境(在来の生態系が少しでも維持されている環境)」で行ったら、それは既に「悪事」です。
少なくとも僕には、その分別を小学生に教える自信はない。

今度こそ以上です。

ではまた次の記事で。
お読み頂き、ありがとうございました。