Minakami Room

旅を続ける。考える。自由である。生きている。

映画『ロッキー』は案外「オタク的」な映画なのかもしれない

ども、Mistirです。

今更ながら、映画『ロッキー』を初めて真剣に観た。 

ロッキー (字幕版)

ロッキー (字幕版)

 

 

ある程度ストーリーは知っていたつもりだったけれど、想像以上に「オタク的」な映画だった。
それも「現代的」な。

もう少しスポ根系かと思ってたけど、……否、実際にスポ根系ではあったんだけど、少し「ズレて」いた。

最初から語ってみたいと思う。
あ、ネタバレは気にせず語りますね。


この映画、主人公(ロッキー)の内面を観てる人間に理解させるまでの過程が非常に上手い。
茶番にも似た試合から始まって、素人目からしても「安すぎる」ファイトマネーが示される。
そこから流れるような「借金取り立て」へのシーンの移動。
命令に「忠実には」従わないロッキー(良心があるから?)。
この時点で、ロッキーが社会の波に飲まれながら、そこに抗ってる(抗いきれない中途半端な)タイプの主人公だってことが分かる。
……分かるよ(同意の涙)。


非常によくできてるな、って思ったのが12歳の子供に説教するシーン。
これ、見事なものですよ。
このシーンがあることでロッキーのキャラクター性っていうのが明確になるんです。
他人、それも「まだ未来があって」「自分より立場の弱い」子供に説教してるわけですけど、自分はヤクザの取り立て屋ですからね。
そういった自分の立場をすっげー本人も理解してるんだけど、「良心」に従って説教しちゃうわけです。
この「良心」っていうのはなんというか非常にフクザツ極まりないもので……
こういった説教、ついやっちゃうんだよね。なんというか。
子供の目線から見ると「ウゼェ大人」なんだけど、大人の目線からしたら「良心」。
でも本当のところは……?
ーー自分自身が解決できない「正論」を子供にぶつけてるだけじゃないか?
だから、説教のシーンで一気に僕みたいな人間は感情移入しちゃうわけです。
「お前、良い奴なんだよな……分かるよ……絶対にウザがられるタイプだけど……そう、自分で解決できないから人にぶつけちゃうんだ……」

で、ヒロインのエイドリアン。
素晴らしいキャスティングですよね。
はっきり言って、明らかに似合ってない眼鏡付けてるペットショップで働いてる内気な女の子なんて、オタクの好みどストレートじゃないですか(それが「オタク的映画」の理由じゃないですけど)。
で、そのエイドリアンに謎の激しいアタックかましてモノにするわけですけど、このシーンよくわからないですよね、冷静に考えると。
はっきり言って「男慣れしてないヒロインをゴリ押し褒め落としでオトした」ようにしか見えない。
だって、エイドリアンが落ちるシーンまで主人公、「猛烈なアタック」しかしてないですよね。
……いや、その何が不自然かって言うと難しいんですけど。
想像以上に物語のテーマに関わってないじゃないですか
ボクシングのサクセス・ストーリーっていう流れに。

ストイックにトレーニングしたり、アポロへ闘争心を燃やすロッキーにエイドリアンは惚れたわけじゃない。
外に連れ出してくれて、ゴリゴリ褒めてくれて、ゴリゴリ押してくるロッキーにやられちゃったわけです。
これは「良い」とか「悪い」とか、そういう問題じゃなく……通常考えられる「ヒロインとくっつく流れ」とはちょっと違いますよね。
まぁ、もちろん「ロッキーという孤独な男」「孤独のメタファーとしての亀」「ロッキーと亀を結びつける架け橋のペットショップ」「ペットショップの内気な娘エイドリアン」……という流れでエイドリアンの存在を読み解くことって可能なんですが、それは重要じゃない気がする。

僕がなんでこの部分にこだわってるかっつーと、
「最初からヒロインを手に入れちゃってる」
ってことがすっげぇでかいと思ってて。

もうはっきり言っちゃえばさ、この映画観た時の最大の驚きはここだったのよ。
「お前、ベテランに素質認められて、女もいて、宝くじレベルのチャンス与えられてもなおウジウジしてんのか!!!??……あ、ベテラン指導者も乗って来た…………お前またウジウジしてんのか!!!???
だったんですよ。

想像以上にウジウジウジウジしてるんですよ。
びっくりしちゃって。
ロッキーって強い男の象徴みたいなイメージで、もうちょいストイックでシビアに自分鍛えてるイメージあるんですけど。
これだけ「状況が揃って」ようやく動き出せるんです。

で、指導者(ミッキー)に言うじゃないですか。
「そんなこと昔言ってくれなかっただろ!!」って。
お前、日本の会社でそれ言ったらクソみたいなコンサルにぼろくそ言われるぞ???
逆に言えばクソみたいなコンサルには「ロッキーのメンタリティどう思います?」って聞いてみましょう。冗談ですが。

さて。
ここまで考えて、「似てる」って思っちゃったんだよね。

以下、赤字がロッキーの特徴です。
さて、青字はなんでしょうか?

才能、素質があって才能、素質があって
社会の厳しさに揉まれていて世界のシステム的に最弱のレッテルを背負わされてて
女に恵まれてハーレム形成の鍵が随所に転がっていて
突如偶然舞い込んだアメリカンドリームのチャンスがあって偶然異世界に転生して
それでもなおわりとウジウジしててそれでもなおわりとウジウジしてて
根はいいやつで根はいいやつで
良き年長者に恵まれる:良き年長者に恵まれる

右側、大分作為的な面もありますけど……
要は「少し前に批判されがちだったラノベや漫画の固定パターンじゃねえか!」って思っちゃったんです。
もっともっと「王道スポ根」だと思ってたら、ロッキーは思ったより人間臭くて、かつ運ゲーの世界を生きてて、もっと言っちゃうと結構クズだ、と。

もし熱い少年漫画で、これだけ条件背負っててウジウジしてたら、間違いなく主人公として人気出ませんよ普通は。
……でも、そういった「クズ」だからこそ凄く感情移入しちゃうわけで。
別世界の思考の人間じゃないからこそ。
だからこそ、ミッキーとの言い争い〜和解のシーンがすごく良い。
そうそう、人間の喧嘩と和解ってあんな感じだよなって。
人を恨むときって本当に複合的な理由が絡みすぎてて。
全部を吐き出さないと上手く回らないことって本当に多くて……。
そしてラストシーン、そういった人間的な部分、色々なクズさも抱えて、「克服して」、全力で戦い、決して倒れないロッキーに観てる人間は全力で感情移入しちゃうわけですね。上手いなぁ。


で、この記事のオチなんですけど……

映画を観終わった直後の、映画関連会社社員N君の会話を載せておきます。


僕「ここまで条件揃わねえと動かねえって意外だったんだよね。もうちょい王道熱血系主人公だと思ってたし」
N君「アメリカって格差半端ないからそれ反映してるのかも。これくらい条件揃わねえと成功できないって」
僕「なんかな、SA◯とかみたいなライトノベルと凄く被るものを感じたんだよ」












 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

N君「日本も00年代以降は格差社会やからな」



 

THE END


お読みいただきありがとうございました。
ではまた次の記事で。
今公開してるスピンオフ観に行こうかな……