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MistiRoom

それでも、何かを語るのだ

知人に依頼されたので、掌編小説を書きました

こんにちは、Mistirです。

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胃が痛いです。

さて、今回の記事は……せっかく読者の方が増えて非常に嬉しい中で、ちょっと「例外」の記事です。
実はTwitterで知人に「小説書けないの?」って言われまして。
「テーマ出すから書いてくれ」って言われたんですね。「サルでも分かるレベルで」って。

とりあえずささっと書きましたし、せっかくなので公開します。
めちゃくちゃ短い掌編小説ですしね。

ということで、今回の記事に関しましては「そんなん興味ないわ!」って人は読み飛ばしてください、マジで。
……安心してください。普段はこんなことしないので。


テーマとして与えられたのは「眠れない夜」でした。

タイトルは『外側の眠り』です。

では、どうぞ。

 

 眠れない夢を見た。

 

 夢を見ているということは、眠っているということだ。起きている時に見る夢っていうのが僕にはわからない。それは目標と呼ばれるべきもので、僕にとって夢とは眠っているときに見るものだ。だから夢を見ている僕は眠っている。でも、僕と意識を共有しているはずの夢の中の僕は眠れないのだ。

 眠れない夢。その夢の中で僕が、いやーーあるいはカメラが、布団の上から僕を見下ろしている。カメラは僕の視線そのものだった。部屋は薄暗い。だから何も見えないはずだった。ーーいや、見えるのだ。だってこれは夢だから。僕の目ーーカメラが、布団の中に入っている僕の顔をはっきりと映した。

 笑ってしまった。自分の真顔を見ることがここまで面白いとは。笑ったら自分に悪いし、そもそも声出して起こしちゃったらマズいと思って、奥歯を噛み締めて僕は自分の目をじっと覗いた。

 思った。

 ーーお前、そんな眼じゃダメだろ。死んじゃってるよ。ゾンビの眼だよそりゃ。

 声は出なかった。その代わり凄く悲しくなって、いつかの感情を思い出してしまった。

 この感情はあのときの感情だ。離婚した親父の、ばあちゃん、つまり僕のひいばあちゃんが死んだときの感情だ。お母さんからひいばあちゃんの死を聞いたとき、取り返しのつかない何かが僕を覆い隠してしまった気がした。よく考えれば何故お母さんが離婚した夫の祖母の、その死を知っていたんだろう? 何故知ったんだろう? まあ細かいことはどうでもいいや。大事なのは、そうーー大事なのは。僕の手の届かないところで、僕の干渉できないところで、僕が干渉しようと思えば干渉できた存在が、もう干渉できないところに行ってしまったこと。

 取り返しがもうつかないということ。

 ーーなあ、泣きたくなるよなぁ。俺もう泣いてるよ。

 ぱっと目が覚めた。最低限の明かりは点けているから、部屋は真っ暗ではない。だから、見えてしまった。

 天井に奥歯を噛み締めた男の顔が見えた。

 いや、あれはカメラか? 大きなカメラ?

 どちらでも同じことだ。僕は僕をじっと見る。お前、なんで泣いてるんだ? そんな顔するなよ、なぁ…… 

 

 残念ながらこれは夢じゃない。起きてるときに見る夢は夢じゃない。今僕は起きてる。だからこれは夢じゃない。でも、なんで全然怖くねえのかな? 常識的に考えて天井から僕が僕を見てるって結構怖いと思うんだけどな。いや、常識的に考えると人が天井にいる時点で怖い。

 僕は自分に、天井に存在する自分自身に対して、問いかけようとした。

 ーーお前、なんで泣いてんの?

 無理だった。声が出せなかった。喉に何かが詰まっているようで。ああ、そうか。喉が渇いているんだ。水を飲もう。あとそうだ、アレルギー用の薬を飲むのもいい。今動くと眠れなくなりそうだ。今眠れないのは困る。明日はーー明日は。

 明日はーーまあいいや。

 それより薬だ。アレルギー用の薬は睡眠導入剤の代用品になる。睡眠導入剤薬事法か何かの関係で高いが、抗アレルギー用の薬は睡眠導入剤と全く同じ成分で安いらしい。

 身体を起こした。天井に泣きそうな男の顔は無かった。台所のライトを点けて、冷蔵庫から烏龍茶を取り出す。薬を飲む。ウチの冷蔵庫は隣に洗面台があるから、自分の顔を見てみた。ここで泣いてたら面白いんだけど。

 ただの不細工な男の顔が映っていた。さっきまで寝てたのに、妙に疲れた顔をしていた。

 

 眠い。

 明日は大事なーー

 布団に入ろうとしたら、布団の中で真顔の僕が天井を見ていた。僕も視線の先を見た。視線の先、天井には天井とライトしか無かった。そりゃそうだ、天井には天井とライトしかないのが普通だ。

 先客がいるなら仕方がない。眠っている人……眠ろうとしている人を邪魔するのは良くない。

 僕は布団の隣に座り込んだ。身体が疲れきっていることに気付いた。布団の中の方の、横になっている僕は真顔だった。面白い。でも座り込んでいる僕は泣きたくなった。

 でも泣けない。泣くと邪魔になる。

 邪魔をしてはいけない。

 僕は僕の邪魔をしてはいけないのだ。明日は大事な日なのだから。

 

 座り込んだまま、夜が明けてしまう。空が明るい。僕は、結局一度布団から出てから眠っていない。布団の中にいる僕もそのまま動いていない。

 僕は眠ったのだっけ? そもそも。

 どうでもいいや。

 倦怠感とか、取り返しのつかない何かの感情を抱えたまま、大事な日がやってくる。大事な日なんだ。そう、間違いなく……大事な……。

 今日は何の……日だっけ? もう、どうでもいいか。

 もう、取り返しがつかないんだ。夜は終わった。

 鳥が鳴いていた。眩しすぎる朝だった。

お読みいただきありがとうございます。
それではまた次の記事で。多分小説ではないですのでご安心くださいw